地域九条の会 合同講演会 09年 音楽と憲法の夕べ |
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講演要旨 *ベトナム・シンガポールでの体験
先週、台風のさなかを、伊藤塾の研修旅行の下見を兼ねてベトナム、シンガポールに行ってきた。ベトナムでは、中部のダナンで、ベトナム戦争時に韓国軍が村民を虐殺した現場に行き被害者の話しを聴いた。韓国軍はアメリカ軍にいいように使われて、兵士は戦争の道具として加害者にさせられた。戦争は大変なことと感じた。日本も間接的にベトナム戦争に加担したが、それでも9条があるために韓国軍兵士のように殺害、殺戮に加担させられることはなかった。
人が戦争の道具として利用されたり、経済発展のために市民が道具として利用されるこれらの例のように、人間が何らかの目的の手段として使われることは、許されない。シンガポールでは、幼稚園から教育が徹底していて、批判・議論を教えない、従うことのみを教える。そうした自由のない“奴隷の幸せ”ではなく、人間性の尊重、一人一人の主体性を要に憲法は成り立っている。 教育基本法が改悪された。一番の問題は、前文と1条が変わってしまったことだ。旧法前文は、憲法の理念の実現と教育を一体化することで教育の目的を実現しようとしているのに対して、今の教育基本法は、前文で教育の目的を、国家を発展させることとしている。そして、1条の「教育の目的」では、国や社会を支える資質を身に付けること、国を支えるために必要な力を蓄えよということになってしまった。ただ、目的が全く違ってしまったが、憲法が変えられない限り、「国や社会を支える資質」の育成を民主主義の担い手としての人間の育成と読み取ることは可能だ。 *憲法改正手続法 07年5月に憲法改正手続法が成立した。大変なことになると危機感を持った人は多いだろう。しかし、私たちはここ2年半くらいの間に、若い人何人に憲法について伝えただろうか。この法律では18歳から国民投票できるようにしようとなっているが、子供たちが憲法について知ることが大切だ。伝えようとする具体的行動・努力をやり続けないと、改憲の動きが高まった時に、踏ん張れない。自分で主体的に判断できる力、憲法の力を身につけた国民が育っていないといけない。
私たちは法律に従うが、法律が正しいから、民主主義の国で国民主権のもとに出来た法律だからという理由付けがされる。しかし、国民の多数意見は間違うことがある。例えば、ヒトラーは民主主義のルートで政権に就いて、いろいろ悪いことをやった。私たちは、情報操作に惑わされて正しい判断が出来ない可能性がある。小泉さんは、郵政民営化賛成か反対かを訴えた。ヒトラーのマニュアル通りにやって、国民はその通り反応した。残念ながら、人間には民族を超え、時代を超えてそういう弱さがある。その時々の国民の多数意見でも、やってはいけないことがある。それを冷静な時に書き留めたのが、憲法だ。憲法で歯止めをかける、それが立憲主義だ。イギリスで、国王の権力を縛るために憲法は生まれた。今の日本は、民主主義と立憲主義の国だ。民主主義についてはよく触れられるが、立憲主義については余り触れられない。戦後、立憲主義をはっきりさせたのが、民主党だ。そこは評価できる。
自分が20代後半まで憲法に無関心でいることができたのは、多数派の側に自分がいたからだ。日本人で、健康で、親に大学まで行かせてもらった。それだけで多数派、強者の側に立つ。そんな人間は、ふだん憲法を必要としていない。もし私が、車椅子が必要だったり、経済的理由で進学できなかったりしたら、違っていただろう。だから、憲法は難しい。貧困・格差の問題でも、多数の人は、派遣村はテレビの向こう側の世界のこととして、観ただろう。正社員、とりあえず生活できる人にとって、想像力を働かせないと、他人事に終わってしまう。多数派から、いつ自分が少数派になるか判らない。また人は多面性を持っている。強い面もあれば、弱い面もある。共感力を持って、相手の立場に立って考えることができるかどうかだ。
私は、憲法で一番大切な条文を選び出せと言われたら、13条前段を上げる。誰もがみな同じように大切だ。一人ひとりが幸せになるために国がある(個人主義)。どんな凶悪犯罪を犯した人であろうと、人として生きる価値を認められるべきだ。口で言うのは簡単だが、いざ自分の身内が被害にあったら…。敵の国の人の命や人権も大事だ。それを道具として扱うのは間違っている。それはどうでもいいというところから戦争は始まる。だから9条がある。戦争をしないと覚悟するなら、この点を納得しないといけない。
9条は極めて現実的な規定だ。一方で、理想だとも考えている。“テロとの闘い”などといっても、軍事力で守れるわけがない。日本は、海岸線が複雑に入り組んでいて、人口が密集している。ならば、テロの標的にならない、攻められない国にするしかない。軍事力に頼らなくて済む、軍事力以外の力、経済力、政治力、文化の力、理念の力などさまざまな力を付けなければならない。それがこの国の現実に合っている。戦争が起こったら、死ぬのは9割が市民(非戦闘員)だ。
どんなすばらしい憲法があっても、憲法の力は国民の力以上にはならない。この憲法をどう使いこなしていくかだ。これからいかに次の世代に立憲主義を、一人ひとりの人間の大切さを伝えていくかは、今を生きる人間の責任だ。60年前の日本に生まれていたら、また現在のイラクやアフガニスタンに生まれていたら、全く別の人生を歩むことになる。たまたまこの時代の日本に生まれて、憲法の一番いい時期を享受した人間として、一人ひとりが自分のできることを今すぐ始めよう。
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―――――――――――――――――――――― 以下は開催前の案内です ――――――――――――――――――――――
地域九条の会 合同講演会
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5つの地域の九条の会は共同して、音楽を楽しむとともに、<憲法九条を生かし、平和と暮らしを守る>講演会を開催することになりました。かつてない経済危機のなか、日本を「海外で戦争する国」にする改憲の動きが進められ、私たちの平和と暮らしがおびやかされています。今こそ、いかに憲法を「活かす」か、をともに考えましょう。 |
<第1部> ミニコンサート |
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演奏 |
アコルディ弦楽四重奏団 |
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<第2部> 講 演 |
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講 師 : 伊藤 真 さん |
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伊藤 真 ( いとう まこと ) |
開催日 10月7日(水)
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会場 大田区民プラザ 大ホール 多摩川線 下丸子より徒歩1分
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主 催: 池上九条の会
、大田たまがわ九条の会 、新蒲田九条の会
、東矢口九条の会 |
<代表連絡先> 大田たまがわ九条の会・事務局 小林稔治 方 Tel:090-6109-6273 |
各会の連絡先 チケットの購入などは下記へ |
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池上九条の会 |
肥後智恵子 方 Tel&Fax:3751-3615 |
大田たまがわ九条の会 |
小林稔治 方 Fax:3756-5238 Email:info_ota_tama9@yahoo.co.jp |
新蒲田九条の会 |
多田鉄男 方 Tel&Fax:3738-8916 |
東矢口九条の会 |
伊藤栄二 方 Tel:3734-8589 |
田園調布九条の会 |
駒木根 方 Tel:3759-5521 Email:xexyoho1@yahoo.co.jp |